閑話休題
今連載中の「虎穴に入っては・・・」の続編は、数日後に掲載させていただく積りですが、その前に、幕間として、電気自動車についてのお話を載せさせていただきましたので、一息ついてお楽しみください
1)始めに
こういうお話は、計算の基礎となる数値が、前提条件によって、異なります。
従って選択されている数値は、計算する側の人間の立場によって、恣意的に操作される可能性もあり、政府当局者だとか、電気自動車の研究、生産、販売に関わっている人達、電気自動車の普及に努力していらっしゃる方々といった人達のお話には、百パーセント信頼できないものもおみかけします。
そうは申しましても、車についての知識も持たず、化石燃料等の燃焼によって生ずる、炭酸ガス排出量についての、独自のデータも持ちあわせていない素人の私の話などに、どれほどの信憑性があるかと言われれば、これ又反論のしようがありません。
何しろ本文は、パソコンから拾ってきた、僅かなデータに、車については素人にすぎない私の、私なりの考察を加えて、値を割り出し、それをもとにして、導き出したものにすぎませんから。
従って、本文は、今現在、電気自動車の購入を考えていらっしゃる方々への、一つの参考意見の提供程度のものと考えていただいた方が無難かもしれません。
なお、本文は、電気自動車を推進する立場でも、電気自動屋に反対の立場でもない、一消費者の、中立的な立場に立っての意見ではあります。
2)電気自動車は、ガソリン車より経済的に優位か
①1キロメートル走行するに要する電気自動車の電気料金
1kwh当たりの電気料金については、
イ:電力会社によって異なります。
ロ:利用する電気の時間帯によって異なります。
即ち深夜電力を利用するか否かによっても異なります。
それに、基本料金だとか、燃料調整金の加算、使用量の増加による加算等を勘案
する必要がありますから、一つの数字で正確に表す事は出来ません。
したがって、凡(おおよそ)その値しか出す事ができませんが、
以下のような数値が妥当ではないかと考えます。
(24年2月現在 中部電力の場合)
一般従量電力利用:(深夜料金契約無)24円~24.5円/kwh
深夜料金の利用 : 9円~9.5円/kwh
註:甘めに見て、これ以降の計算には24円/kwhと 9/kwh の数字を採用してある
ハ;電気料金は原子力発電所の再稼働無しの場合、今後大幅アップの可能性がある
ニ:電池容量:、24kwh(日産リーフの場合)
ホ:一回充電時の料金=深夜料金でない場合・・24×24=576円(24円/kwhとして)
深夜料金を利用時・・・9.×24=216円(9円/kwhとした時)
ヘ:一回の充電で走る事が出来る距離
走り方、スピード、道の状態にもよりますが大体100~120キロメートル
ト:従って1キロメートル走行するための費用=1.8円~2.2円(深夜料金のみ利用時)
ないし=4.8円~5.8円(一般従量電力使用時)
②電池の料金
現在の所電気自動車に使われる電池の料金は非常に高額で
5~10万円/kwh と言われております。(最近は量産効果が出て5万円/kwh位とかなおごく最近の情報では、3万円/kwh の韓国製、製品が出てくるとも言われています。)
なお電池の寿命は、現在の所、せいぜい 1000回から1500回といわれています。
従ってそれも走行するのに要するコストとして計算に組み入れる必要があります。
今回の計算では、電池の代金を5万円/kwh、充電回数には、最大回数である、1500回をもちいてあります。
すると、走行距離1km当りに要する電池のコストは
(50000×24)÷(1500×100ないしは120)=8 ないし6,7円/走行距離km
③よって、電気自動車の走行1km当たりのコストは
1.8~2.2 +6.7= 8.5~8.9円(全てを、深夜料金利用時)1充電で120km走行時
ないし・・・+8=9.8~16.9円 (同上) 100kmしか走行出来ない場合
4.8~5.8 +6.7= 11.5~12.5円(全て、一般従量電力利用時)120km走行時
ないし 19.5~20.5円 100kmしか走行しない場合
註1:ガソリン車でも、バッテリーは使っていますが、価格が定額で、走行
時のコストに影響を及ぼすほどではないので省略してあります。
註2:電池以外の車体コストの走行1km当たりのコストについては、
電気自動車と、ガソリン車の間に、さほど差がないものと仮定して
本計算においては、省略しました。
またエンジンオイルのコストについては、ガソリン車の場合、電気自動車より余計にかかる可能性は強い。
しかしそれについてのデーターの持ち合わせがなかったので
それに代わるものとして、ガソリンの価格を実勢価格より
2~3円/L高く見積もりました。
註3:1kwh走行に要するコストは家庭に急速充電器を設置すると、非常に高くな
ります。一説には設置費用は200万円くらいかかるとも言われております。
2kwのコンセントを新設すれば充電に時間はかかるが、可能ではあるとの由につき、これも計算にいれなかった。なおその代わり、もっとも安価な深夜短時間特別割引は使えません。
註4:市中での充電については、現在普及期間中故、無料ないしは一回100円程の低料金となっております。しかし普及してくると有料となります。
その場合、政府の補助の程度がどれくらいあるかによって変わりますが、それが無かった場合は、スタンドの設備費、維持費、そしてスタンド側の利益が上乗せされますから、かなりの高額になる可能性があります。
一説では電気料金の数倍はとらないと引き合わないとも言われております。
④ガソリン車が1km走行するのにかかるコスト
走行する場所(市内か市街か、坂道が多いか平坦か、舗装道路か否かなどなど走行の仕方(経済速度での走行か否か、アクセルとブレーキの頻用度など)によって異なります。
一応日産リーフと同程度のガソリン車を対象にして考えますに、
ガソリン1リットル当たりの走行距離は、13から15キロくらいと言われております。現在ガソリン代金は、137円~138円/L・・・エンジンオイル代金を勘案し、ここでは140円/Lとしますと(24年2月20日の価格)
ガソリン車が1km 走行するのに要する費用は
140÷13~15=10.7(13km/L走行時)~9.3 円/km (15km/ガソリン1Lの走行時 )
⑤ 以上の計算から、深夜料金のみを使った場合
イ)走行の場所、走行の仕方によっては電気自動車の方が、やや低料金
で走行できる可能性はある。
ロ)しかし、ガソリン車においても、その経済速度での走行を行った場合、
電気自動車との差は僅かでしかない。
ハ)一般従量電力での充電を混用すると、数回それを行っただけで、
殆ど差がなくなるどころか、
場合によっては、電気自動車の方がむしろ走行距離当たりのコストは
高くなる場合も少なからずある。
何の補助もない市中の急速充電装置を使わねばならなくなった場合は、
ガソリン車より、かなり高額となる可能性もある。
註①:なお電気料金、ガソリン価格とも、現在非常に流動的で、今後かなり
上昇していくものとおもわれます
註②:蓄電池の性能、価格は今後急速に向上、低下すると思われるので
電気自動車1km 走行距離当たりのコストも急速に低下する可能性が大であ
る。その数値によっては、電気自動車の優位性は高まる。
3)炭酸ガス排出量の比較
①電気自動車の場合
一般に電力、単位kwh当たりの炭酸ガス排泄量は
その発電が依存するエネルギー源、すなわち、水力か、火力か(天然ガス、石炭、石油等の化石燃料)原子力か、風力か、太陽光かなどによって大きく異なります。
その為、その値は、電力会社によって大きく異なっております。
東北大震災以降、各電力会社とも、原子力発電への依存度は大きく減少しておりますから、現在、各電力会社の1kw発電当たりの炭酸ガスを排出量はかなり増加していると
思われますが、そのデータは、今の所みつかりませんでした。
なお、東北大震災前のデータによりますと、東京電力は384グラム/KWH、中部電力474グラムKWH、沖縄電力931グラムKWHでした。
この数値から推定しますに、原子力による発電が殆ど見込めない現在では、その数値は沖縄並かそれ以上の値、即ち、900gr/kwh以上となっている可能性が強いと思われます。
今後の原子力発電の幾許かの再開だとか、また風力、太陽光発電といった自然エネルギーの増加をおり込み、中部電力並の炭酸ガス排出量と仮定して(実際はおそらくもっと多くなると思われますが)計算しますに、
(註:政府のエネルギー政策の行方がわからない今日では、非常に大胆な推理によるものなので、この数値は大きく変わる可能性があります)
走行距離 1km当たりの炭酸ガス排出量は
24×474÷100~120=113.7~94.8グラムである
仮に原子力発電が殆ど利用できず、自然エネルギーの利用も殆ど進まなかった場合は、
沖縄並の930を考えざるを得ませんが、そうなりますと
電気自動車 走行距離 1km当たりの炭酸ガス排出量は
24×930÷100~120=223.2~186グラムとなる
②ガソリン車の場合
ガソリン1リットル当たりの炭酸ガス排出量は2300グラム
従ってガソリン車、走行距離1km当たりの炭酸ガス排出量は
2300÷13~15=176.9~153.3gr/km
以上から考えられる事は、炭酸ガスの排出量に関しては、政府のエネルギー政策に関係する所が大で、非常に流動的であり、原子力発電が止められたままの、現在の段階では、電気自動車の方が必ずしも環境に優しいとは言いきれない事を表しております。
なお、電気自動車の排気ガスが零であるかのような錯覚を起こさせるような文言を時々見聞いたしますが、そのような事はありません。
確かに、電気自動車では、走行している際、直接排気ガスを市中に撒き散らす事はありません。
しかし電気自動車においても、その動力源である電力は、それを発電する際、今の所、化石燃料に大きく依存しています。従って、排気ガスの排出が零とは言えません。
只その排出場所を、個々の自動車ではなく、発電場所に集中させているにすぎません。
註①:窒素酸化物、硫黄酸化物といった排気ガスに含まれる有害物質について
これについても考慮すべきと思われる人もいらっしゃるかもしれませんが、
最近の車においては、排気ガス対策が厳重に施されております。
又火力発電所においても、公害対策が行きとどいております。したがって、
それらについては比較の対象からはずしました。
註②:原子力発電所の事故におる影響については、今の所、被害額だとか、起こりうる
頻度の計算データがないので、計算のしようが無く、今回は除外してあります。
しかし東北大震災によって引き起こされた、福島における原発事故の被害の大きさと悲惨さから考えたとき、それらも考慮し、さらに、廃炉に掛かる費用、核廃棄物の処理に掛かる費用迄計算に入れた場合、原子力により発電される電気の料金は、今迄考えられていたのとは、比較にならないほど高額なものとなる可能性を否定できません。
4)結論
今の所、経済的にも、炭酸ガス排出量から考えても、ガソリン車に比べ、電気自動車の方が優れているとは言いきれる状態ではありません。
今後、電気自動車が、環境に優しい車として、社会に認知され、市中において見かける普通の車となっていけるのか、それとも、より環境に優しく経済的な車(たとえば、燃料電池車だとか、水素だけで走る車)が出現するまでの繋ぎで終わってしまうのかは、今の所未知数だと思います。
現在行われている電気自動車発売ブームは、より環境に優しい車を生みだし、普及させていくため、一般大衆を巻き込んで行われている社会実験の一つではないでしょうか。
だから今直ちに、電気自動車を購入しようとされている方は、そのような社会実験に積極的に参加し、ブームと言う風を背に受けながら、時代の先端を走りぬけようとしている先端技術開発の手助けをしているのだと考えてください。
そこには先端技術開発に役立っているという誇りと喜びがありますが、反面、一時のブームに煽(あお)られて、高い玩具を買わされてしまったという、苦い後悔が待っている可能性だって否定できません。
電気自動車の購入を考える際は、その事を、熟知の上、購入の可否を決めていただきたいと思っております。
終わり