No.43 ネット販売の怖さ

以前に11月11日、丸紅が運営するネットサイト「丸紅ダイレクト」が販売用パソコンの価格表示の際、一桁間違えてしまったためになんと2億円の損害を出してしまったというニュースがテレビに新聞にと大々的に報道されているのを見たことがあります。
何でも「198,000円」の最新のデスクトップ型のパソコンの値段を「19,800円」と表示してしまい、間違いと気づくまでの3日間の間に1500台もの注文が殺到してしまったための損害だったとの話です。
丸紅側も早速価格を訂正し、契約されたお客様には契約の取り消しをお願いしたそうですが、お客様は納得されず抗議のメールが殺到したそうです。そこでやむなく最初に表示した値段で売ることにしたわけですが結果として2億円もの損害を出してしまったのです。なおこのサイトでの販売は注文を受けると自動的に売買契約が成立するようにプログラミングされていたそうで、そのため契約は成立しており、その契約を解除するといっても法的になかなか難しいのではないかというのが弁護士さんの見解でした。(日経新聞では民法の『錯誤に基づく契約無効』が適用できるのでないか記載してありましたが)

丸紅としてはそのような訴訟の煩わしさとそれにかかる費用や(原告が多数になる可能性が高い為)信用失墜による損害などなどを勘案して 泣く泣く「19,800円」で販売することにしたのだと思いますが、それにしても大変な損害で ネットでの商いをしているものとしましては身につまされるお話でした。

ネット販売では数字をパソコンに打ち込むだけですから、ついうっかり数字の桁違いを起こしやすいことは皆さんもご存知のとおりです。私どもでもヒヤリとしたといった経験が一度や二度はありました。しかしこのようなことはそのままの価格で商品を売るにしては余りにも損害が大きく、またたとえ事情をお話して価格訂正に応じていただいたとしましても今度はお客様に不快感を与えます。結果としてお店としましては信用を失ってしまうわけです。従ってこれを他山の石とし、よくよく気をつけねばと自戒しているところです。
もう一つのネット販売の怖さは品物を売ってもお金を支払っていただけない危険性です。
ネット売買について、買う側の危険性については皆様もご存知の通り、第一はお金を払っても品物が届かないことでしょう。次いで注文した品物と送られてきた品物が違ってくる危険性です。傷物であったり、粗悪品であったりする危険性です。
この場合お金を払ってしまわれますと、相手が悪意の人である場合は、それを取り戻すのは至難です。
従ってネットでの購入をされる場合は購入先の信用がとても大切となります。一方皆様方は売る側ではありませんから売る側の心配についてはあまりご理解頂いていないと思います。ご注文を受けた際、代金引換にしていただくかローン契約の確認または代金の入金を確認してから送らせて頂きたいなどと申しますと、何となく不機嫌になられるお客様もいらっしゃいます。お客様の立場になれば当然のことで、そのお気持ち理解出来ないわけではありません。

しかし私ども売る側としましてはお客様について何の知識も無いわけですから、やはり取引については慎重にならざるをえないわけです。何しろ私どもの取り扱い金額は数十万単位のものが多いものですからなおさらのことです。
しかし注意しておりましても実際に、色々なことが起こります。つい先だってもこんなことがありました。

以前ネットで廉い版画を買っていただいたことがあったお客さまでしたが、この度もメールで20万円ちょっとの絵画のご注文を頂いたのです。その時 「10万円送金しましたからすぐ品物を送ってほしいと」いうお話で 「残金は品物が到着しだいお支払いしますから」と言ってこられたのです。普通ならこういったご注文は絶対にお受けしないのですが、すでに一度お買い頂いたお客様でもあり、メールで何度もやり取りしてきたお客様でもあり、金額的にもそれほど大金というほどではありませんでしたから、つい信用して品物を送ってしまいました。

ところがその後、しばらく待っていたのですが送金はありません。そのうちに電話は不通、住所も転居され、連絡をつけようにもつかなくなってしまわれました。まさか10万円ちょっとで逃げられるとは思わなかったのが盲点であり、メールで何度もやり取りをしていると本当は何も知らない間柄にもかかわらず、いつの間にか何となく古くからの知り合いの様に錯覚して、つい気を許してしまうといった恐ろしさがあるのですよね。

しかし実際に被害にあった私どもの立場から考えてみますと、この金額は微妙な金額でして取り立てに時間とお金をかけるにしては少なすぎ(労力をかけた割には、元を取れない金額です)そうかといって諦めて放ってしまうには少し金額大きすぎますものね。
しかし結局は諦めるしか方法がなかったわけですけれどもね。ネットでの販売というのは皆様もご存知のとおり比較的薄利ものですから、このくらいの金額でも代金をいただけないと結構痛いのです。こういうことがあるものですから、ついつい慎重になって、お支払いに関しては、多少お客様には不愉快な思いをさせる場合もあるかと思いますが、その節はご事情ご賢察の上お許しください。

尚このお客様、私のところ以外の画廊からも同じような手口で絵を手に入れられたとも聞いておりますが、それにしても これくらいの金額で世の中を正々堂々と渡っていく道を失ってしまわれたというのは、どういったお気持ちでこんな事をされたのでしょうね。本当にいろいろなことがあるものです。