No.32 ロビンちゃんは反抗期。

長崎の幼児殺人事件の犯人が逮捕されました。
12歳だったそうで、被害者の御両親の気の毒さは言うまでもありませんが、犯人の親の気持ちはいかばかりでしょう。 難しい年頃 で親御さんも困っておられたのではないでしょうか。

ところで先日ご紹介しました我が家の愛犬ロビンちゃんも、もう11ヶ月、人間の年齢で言うと12~13歳、最近は反抗期になっているようです。
この間など、散歩の前に例のように「お願いします」しなさいと言いましても、いかにも他の事に気をとられているといった顔をして知らん顔をして横をむいて座っているのです。以前は私の言うことには絶対服従で「お願いしますは?」といいますと、ちょうど時代劇でお百姓さんが「お代官様お願いしますだ」とするのと同じ格好で両手を頭の上まで持っていってパタンと頭をさげてくれたのですが、このところそれをしないのです。
綱をつんと引っ張って「駄目でしょう。しないならもう連れて行かないよ」と申しましたら振り向いて「ウー、ワン!」と反抗してくるのです。 それはちょうど子供が「うるさいな」といっているのと同じような様子です。子供らしい 悪戯は大分影を潜めましたが、その代わりやることが知能的です。
たとえば私が机に向かって仕事をしていて相手をしてやらないと、最初のうちは私の足だとか、すね、腕などといったところをクチャクチャ、クチャクチャ突付いているのですが それでも相手をしてやらないと、そのうち洗面台の上からティッシュを一枚一枚加えてきだし、足元に噛み散らし、気付いた時には部屋中ティッシュの噛み散らしでいっぱいにされる といった有様。
「またこんなことをして、駄目でしょう」といって叱りながらティシュの片付けをし始めますと、「やっと相手をしてもらえる」とばかり私が片付けようとする前々にまわっては、それを先に咥えて逃げるのです。
「もう、この忙しいのに仕事作らないで」と怒って頭をコツンとしてやりますと「遊んでくれないのがいけないのだわ」とばかりに「ウー、ゥー、ゥー、ウー、クゥワン」と体中 を軽く噛んでくる始末、本当にタチが悪くなりました。
靴下なども以前は咥えて逃げてもそれは遊び道具としてであって、咥えて逃げた後、それで私の足元で遊んでいたのですが最近は違います。
普通においてある靴下には目もくれません。さて外出しようかなと思って靴下を履きだしますとさあ大変です。どこからかさっとやってきて、手に持ってない方の靴下を咥えて逃げ出します。
「こらー、駄目」といって怒りますと靴下を咥えたまま部屋の外に飛び出します。「こりゃ待て」といって追っかけるとさっと逃げ、5mくらいの距離を保ってこちらが追っかけてくるのを待っています。やっと追いつくとまたさっと先まで逃げ「ちょっとやそっとでは捕まらないよ。ここまでおいで」といった顔をしてからかいながら逃げるのです。
この為、ついこの間だってなどバスに乗り遅れ、約束の時間に間に合わないということが ありました。
家の前は公園になっています。裏木戸を開けた時などに逃げ出す事があるのですが、 幼かった頃はもうこわごわで、公園の入り口のところで立ち止まって迎えに行くのを待っ ていたものです。
もう少し大きくなってからはさすがに公園の入り口でなく公園の中まで 走っていくようになりました。
しかし「一緒に遊ぼうよ」と「ワンワン」ほえながら公園の中を走り回るのですが、いつでも私のそばについていて離れませんでした。
「駄目でしょう。帰りますよ」というと仕方がなさそうに側によってきて首を出し、首輪をはめさせたものでした。 ところがこの間の夜など、逃げたと思ったら呼べども追っかけれども近寄ってこず、例の 調子で絶対につかまらない距離をとって振り向きながら、逃げて歩いているのです。
もう最後はこちらも疲れてきてしまったものですから「ロビン。もういい加減にしなさい」 と怒鳴ってやりました。すると追っかけているうちにいつの間にか姿が消えてしまったのです。
今まで公園の外へ一人で行ったことはない犬ですから「これはどこかに逃げていってしまったかな。もし外に出たら道に迷ってしまうのでないかしら」と思うと一瞬真っ青になりました。
まだ遠くへは行ってないはずだからと思ってその足で探しに出ようとしました。 しかし突っ掛けで出てきたものですから、靴へ履き替えるために一先ずうちへ帰ってきました。
すると暗がりからチョロチョロと尻尾を振りながら寄ってくる影があるではありませんか。 尾を下げ身体をすくめ、いかにも恐縮しましたといった格好で身体をこすり付けてくるのです。 こちらが真剣に怒ったことを知って、先回りして恭順の意を示してきたというわけですね。
こうなりますともう駄目です。先ほど心配しただけに安心の方が先に立ってしまい、怒りの方はとうの昔に忘れ 「呼んだらちゃんとすぐ来なければ駄目よ」というくらいで、「ちゃんと一人で帰ってきたの。お利口ちゃん。お利口ちゃん」といいながら抱き占めてしまう始末。
こちらの気持ちを推し量りながら先回りして行動するのですから憎らしいですよね。
今はとにかく自己主張します。したがって習い事も今は教えるのが一苦労です。何しろ気 に入らないとペタンと座ってこちらの言うことなど無視、口をあけて舌を出し「ハー、ハ ~」して「何を言っているの」といった顔でテコでも動こうとしないのですから困ったものです。そうは言っても好きな餌には釣られていろいろな芸をしますが、それでも釣られ ないことが最近は出てきているのです。
それは部屋から外に出してやる時です。以前は外に好きな食べ物をまいてやって「外ね」 と言うと、さっと下に下りていって食べだすものですから、そのうちに戸を閉めて外に締め出す事が出来たものです。ところが最近は知恵がついてきたのか、いくら餌をまいても窓のところまでは行くのですがそこから外に飛び出さないのです。 窓から下を眺めていて 少し経つとまた部屋の中にUターンしてきてしまうのです。 「騙されませんよ」といった顔でドテンと机の下でふせながら、こちらの顔を上目遣いに見ている様子はまさしく反抗期です。本当に始末が悪くなったものです。
ロビンは 車に乗るのは大嫌いです。ですから車に乗ってどこかに連れて行こうとする時なども大変です。家を出る時は散歩と思って足取りも軽くついてくるのですが、車庫に近づく と「これはいけない」と思うのか後ずさりしだします。 そして首輪からスコンと抜け出し、家のほうに向かってさっさと帰って行ってしまうのです。
裏木戸の前に戻るとそこにチョコンと座って戸を開けてくれるのを待っています。車で行くくらいなら留守番のほうがいいというわけなのでしょうね、生意気ですよね。
幼かった頃は、それこそご主人様命とばかり、私がいなければ夜も日も明けなかったロビンでしたのに今では何かと自己主張してきます。
夜寝る時などもついこの間までは何があっても私の足元で寝ていたのですが、最近は違い ます。眠くなった時テレビなどつけていて音がうるさいと、さっさと隣の部屋に行ってし まって、そこで腹を出し仰向きになってゴロンと寝ています。
そんなときは突付いても呼んでも知らぬ顔です。本当に自分勝手だとおもいませんか。
こんなことをいうと「そんな事では駄目ですよ」と専門家から飼い方についてお叱りを受けそうですが、あまり叱ってこちらの顔色ばかり伺う犬になっても嫌ですから今は様子を見ています。 以前に飼っていた犬でもそうでしたが、歳をとってくるとそれなりに落ち着いて自分と飼い主との立場も理解してくるようですので、それまで待っていようとで思っています。