この文章はフィクションです。例え似たような出来事あったり、実在の人物がいたりしたとしても、偶然の一致で、実際の事件人物とは関係ありません。
その14
岡部さんの話その13
私の話を聞いた、弁護士さんは、
「社長、それで、貴方は、路塚氏をどうされたいのですか。刑務所にぶちこみたいのですか、それとも、彼から、この後、何も言ってこないように、できさえすれば、それでよいと思っていらっしゃるのでしょうか」と聞かれました
「そりゃー、出来れば、警察に突き出して、こういう事を、二度としようと思わないように、絞って(しぼって)もらいたいですよ」と私が申しますと、
「貴方の立場になれば、そうされたいのはもっともです。
お気持ちはよく分かります。
でもね、仮に警察に訴えたとしても、この程度ですと、実害もなかったわけですし、他になんらかの余罪でも見つからないかぎり、微罪として、説諭の上、誓約書提出程度で終わってしまう可能性が強いですよ。
仮に、事件として取り上げてくれたとして、どんなに重くても(多分そこまでは行かないと思いますが)、書類送検程度です。
刑務所にぶち込むところ迄は、なかなかいきません。
そうなりますと、残るのは、『自分は悪くないのに、あいつのおかげで、俺は警察の取り調べをうけた。
けしからん、許せない』と言う、彼の逆恨みだけです。
この人、貴方のお話を聞く限りでは、自分本位な考え方をする人で、その上性格は、理屈っぽく、かなりの粘着性気質のようです。
こういう人が、警察で取り調べを受けて、すぐ釈放ということになりますと、後が厄介です。
ストーカーみたいなもので、やくざのお礼参り紛い(まがい)のことをやりかねません。
警察の取り調べが終わった後、手を変え、品を変え、ネチネチ、ネチネチ、ネット攻撃をして、恨みを晴らそうとする、可能性が大きいと思います。
嫌それどころか、場合によっては、何らかの危害を加えてくる可能性だって否定できません。
だから、最初は、強い警告メールを送って相手の反応をみる程度にしておいたほうがよいかもしれませんよ」と教えて下さいました。
その15
岡路さんの話 その14
弁護士の指示に従い、早速
「本日、購入申し込みを、お受けいたしました、秋月香苗様からの御注文の件、同氏へ確認させて頂きました所、その事実はなく、「路塚氏によるものではないか」とのお返事でございました。
又当方で調べさせて頂きました所、秋月香苗様名義での購入申し込みに用いられていた、メール・アドレスは、以前貴殿が用いられていたメール・アドレスと同一の物である事も判明しました。
以上の事実より、秋月香苗様名義の今回のご注文は、貴殿による、『ナリスマシ注文』であると判断せざるをえません。
現在、当画廊の、顧問弁護士に対応策の検討を依頼しているところであり、今後貴殿とのお取引は、一切、お断りさせて頂きます。
またこれまで貴殿からの、購入申し入れに対して行いました、当画廊からの返信メールも、
その全てを、撤回させて頂きますと同時に、今後は、貴殿との接触は、郵便、電話、メールを含め、その一切を、お断りいたします。
今後もし、これまでのような、当画廊の営業に差し支えるような行為をされました場合は、直ちに、法的手続きに入らせて頂きますので、左様ご承知置き下さい」という内容のメールを、路塚氏宛に送りました。
同時に、路塚氏からのメールはその全てを遮断し、受け取らないようなシステムに変更いたしました。
これまでしておけば、万全で、彼と関わりを持つような事態にはもうならないだろうと、安心しておりました。
その16
岡路さんの話 その15
所がそうはまいりませんでした。
路塚氏、よほど悔しかったようで、私どもが、今回取りました、路塚氏からのメールの遮断策の裏をかくかのように、いつも使っていらっしゃるアドレスではなく、以前に彼が使っていらっしゃったほうの、メール・アドレス、あの秋月香苗様にナリスマシの際に使われました方のアドレス、あのメール・アドレスを使われまして、以下のような、メールをよこされました。
「今回の件、本来、正当な理由もなく、商品を売るのを勝手に断ってきた、貴社の方に責任があることは明らかです。
それにもかかわらず、一方的に当方との接触を断ってくるなんて、言語道断、常識欠如、まともな人間のする事ではありません。
それでよくこれまで、何のトラブルも無しに、やってこられたものです。
きっと、私の所にされたように、高飛車に出て、威圧し、黙らせてこられたのでしょうが、そんな経営では、長くつづかないとおもいますよ。
今に見ていらっしゃい、泣く事になりますから。
弁護士はこちらも、お世話になっている弁護士がいます。その方に、事の一部始終を話すつもりです」と。
私も迂闊でしたね。
まさか、いつも使っておられた方のではないアドレスを使ってまで、鼬(イタチ)の最後っ屁のような、怒りのメールをよこされるとは思ってもいなかったのですから。
その為に、そちらのメール・アドレスの方を、遮断するのを、すっかり忘れていたのです。
無論、直ぐそのアドレスからのメールも、遮断しはしましたが、ここで一つ、重大な事を気付きました。
すなわち、彼が、さらに別の、新しいメール・アドレスを取得して、メールで攻撃してこられた場合は、法的な処置を取らない限り、防ぎようがない事がわかったのです。
だから、その後も、しばらくの間、なんとなく気になりました。
しかし幸いな事に、それからもう8週間以上になりますが、路塚氏側からは、今の所、何の働きかけもありません。
今度こそ、本当に終わったようです。
今までも、いろいろなお方と取引をしてきましたけど、こんなに、一方的に、しかも執念深く、ネチネチ言ってきた人は始めてです。
ほんとうに、まいりました。
「こんな話、恥ずかしくて、気軽に誰にでも、話せる話じゃないですから、黙っていましたが、貴方に聞いてもらって、すこし気が晴れました。
それにしても、世の中いろいろな人がいらっしゃるものですねー」
と言いながら、大きな溜息をつかれました。
その17 最終章
岡路さん、本当に大変だったんでしょうね。
でも、岡路さんの話、今はまだ、殆どの人にとって、それは他人事(ひとごと)です。
しかし急速に発展し、今や、一般の人々にまで広く、普及してきている、ネット社会の現状から考えますと、やがてそれは、他人事ではなくなって行くに違いありません。
ネット知識の普及と、ネット機器並びにアプリケーション・プログラムの進歩は、あらゆる年齢、あらゆる階層の人達を、その社会に誘って(いざなう)いくネット社会時代という新しい社会の到来を意味します。
それは、また、同時に、ネットを利用して悪戯や、悪を企む人達や、通常の常識では計れないような考え方をする人達の、私たちの世界への乱入をも意味します。
そのため、ネットを利用した犯罪や悪戯、そしてクレーマーだとかストーカー紛いの嫌がらせなどなどが、今後、益々増えていくだけでなく、益々巧妙化し、悪質化していくにちがいありません。
ゲーム感覚での悪戯だとか、陰湿な嫌がらせに遭う機会が増えるだけではなく、犯罪史上、今まで経験した事のないような、あるいは、実際にそれに遭う迄は、そんなことが起こるとは想像もつかなかったような、そんな犯罪に遭遇する可能性すらあります。
そういった時代にあっては、知らないうちに犯罪に巻き込まれ、被害者になる可能性があるだけではありません。誰かによって、いつの間にか加害者に仕立て上げられてしまっていることさえありえます。
従って、ネット社会の到来を、単に便利なものとして、歓迎し、無条件に受け入れるのではなく、便利さは、危険の隣合わせであると言う事も、よくよく認識し、そのような社会で生きていく以上、常に、用心を怠ってはならないように思います。
参考:
こういった被害に遭遇した場合に頼りになる法律としては
営業を妨害された場合
刑法第233条、刑法第234条の規定により、
①虚偽風説流布業務妨害
②偽計業務妨害
③威力業務妨害
等があります。
なお最近では、電子計算機を利用した犯罪に対しては
第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害)が出来ております。
終り