No.28 親ばか物語その後
ペットに興味のない方は無論のこと、ペットを飼っていらっしゃる方にとっても他人の家 のペットの自慢話くらいつまらないものはないかもしれません。 しかしペットを飼っている本人にとってはペットのする動作の一つ一つがとても可愛くて誰かに話したくてたまらないわけです。
さて、以前にご紹介しました私の家のロビン〈シェルティ〉も、もう8ヶ月。身体は成犬並みに大きくなったようですが、性格はまだ子供らしさが残ったままでとても甘えん坊でいたずらっ子です。 しかしそれがまたかわいくてもう誰にでも自慢したい気分で親馬鹿とそのものです。
こんな話は興味のない方にとっては顰蹙(ひんしゅく)ものかもしれませんが、ペット馬鹿に免じて少しの間我慢してお付き合いください。
ロビンが私の家へ来てから既に6ヶ月余、相変わらず小心で臆病者ですがそれでも今では外で背筋を伸ばし尻尾を立てて歩けるようになりました。他の犬の傍にも小さな犬なら寄っていけるようにもなりました。しかしまだまだ恐ろしいらしく、小さな犬でも追っかけてくると大急ぎで逃げ出し、それでも追っかけられると家に向かって一目散に帰ってきます。
大きな犬などは寄ってくると私の傍まで駆け寄って来て、腰が抜けたように座り込んでしまいます。
悪戯好きは相変わらずで、スリッパ、マット、電話線などどれだけ被害に遭った事でしょう。
こういうときは叱るのですが甘い口調で叱るだけならもう生意気にも「ウー、ウー、ワ ン!ワン!ワン!」と歯向かってくるのです。鼻の上に皺を作り、歯をむき出し反抗的な顔をしてです。
こんな時は抱き上げようものなら「ブーー、、クゥーン、、ゥニャ、、ゥニャ」といって手足を突っ張り反抗します。
しかしこちらが本真剣に怒っているなと思った時は、私がぶつぶつ言い出すや否やさっさと自分の小屋の中に避難し、そこから首だけ出して「いかにも何も悪いことはしていませんよ」といった顔をしてこちらを見ています。 こうされるともうこれ以上強く叱ることは出来なってしまうからいけません。
父はせっせと芸を教えているようで、あれからいろいろ芸が増えてきています。 その中で一番の傑作は東京音頭を踊れるようになったことです。二歩足でひょいと立ち上 げるとキョンシーのように手を前に差し出し東京音頭に合わせるリズムを取りながらクルリクルリと回るのです。 これがまた可愛くてこの姿をビデオにとって皆様にお見せできないのが残念です。
他にも「手を挙げる」とか「お願いします」などといった芸もします。手はまだ両手を一 緒に挙げてしまうので父に言わせると未完成だそうですが、犬に片手を挙げさせるなんて 出来るようになるんでしょうかね。
お願いしますは時代劇でお百姓さんが「お代官様お願いしますだ」といった格好そっくりに両手を頭より高く挙げるとそのままの形でばたんと頭を床につける動作をします。この芸はロビンにとってはあまり好きでないらしく、「時々こんな事やらなくてもいいでしょ」といわんばかりに「クーン、クィーン、ウィーン」と媚を作って身体を摺り寄せてきてごまかそうとします。 私などはそれをされると「まあいいか」と許してしまうのですが、父はそういったときは餌を片付けて知らん顔をしています。すると諦めて「お願いします」をします。やはり 仕込む時は厳しさも大切なのですね。
可愛いのは私が椅子の上に座っている時膝の上に跳び乗ってきて頬ずりしてくることです。 こうなるともうメロメロで可愛くて食べたくなっちゃうほどです。ぎゅっと抱きしめながら 「ロビンちゃんかわいいね」といいますと小さな声で「オー」と返事します。「お姉ちゃん好きと」聞くとこれにも「オーゥ」と返事をします。「お利口ちゃんだね」 といってもやはり「オーゥ」と返事します。「しかしロビンちゃん馬鹿」とか、「駄 目な子?」と いう問いには何も答えません。 やはり少しは言葉がわかるのでしょうかね。
しかしこんなことをお話しても実際に目にしてない皆さんは「そのようなことはただでたらめに返事しているだけで、親ばかだから良いほうに解釈してそう思っていらっしゃるだけじゃない」とおっしゃるだろうとは思いますが。
父はもうロビンに甘くて私がどれだけ止めてもそっと間食を与えます。ですからそれを監視して止めさせるのが目下の私の仕事です。しかしそういう私も帰り道ロビンの顔を思い出すと、ついコンビニに立ち寄って犬のガムなど買ってしまいますからどっちもどっちでしょうか。